2014年5月29日木曜日

【記事紹介】うれしい記事紹介

展覧会が閉幕して半年、茂雄さんが旅立たれて3か月経った今、有明新報さんが社説で江上茂雄展のことを紹介してくださってます。

展覧会は閉幕してもやっぱり終わらず、茂雄さんは旅立たれたけどやっぱり生きている。

茂雄さんの絵を覚えてくださっているみなさんに、ありがとう。(たけ)

5月12日 有明新報

2014年5月23日金曜日

今日の茂雄さん(その4)

クレヨン・水彩絵具・墨、753×566cm
山口薫が描いた月を思い出すような静謐で清らかで、けれどどこか寂しげな絵。と書いて、「月」というのは言いえて妙だなと自分で思いました。なぜならこの絵を最初見た時、縦位置なのか横位置なのか、どっちが上でどっちが下かもにわかには分からず、ただ中空に丸がぽっかりとうかんでいるだけの絵なのかと戸惑ったのですから。

しかしそのうち、その丸のまわりに描かれた柵の具合から、これが草むらの人工池が描かれた絵だと分かります。それにしてもこの池のなんと静かで、明るいこと。

画面のほとんどを占める翡翠色をした草。そよそよと風になびいているさままでとらえた木目のような質感は、茂雄さんが意図的につくりこんだものなのか、あるいは紙の具合なのかもよく分からず、絵のモチーフとしてはたったひとつのものしか描いていないにも関わらず分からないことだらけで、目の奥に刻み付けられるふしぎな絵です。

いやむしろ本当にこれは月を描いているのかもしれない。

池の水面からあふれるような月の光と、さやかに吹き渡る風とを描いたまったき「風景」画としてあるのかもしれない。(たけ)


2014年5月7日水曜日

今日の茂雄さん(その3)

クレパス、クレヨン、水彩絵具 565×752cm

茂雄さんの絵の基調色といえば緑と青でしょうか。風景を描くのでこの二色がベースになるのは自然なことのように思えますが、なかでも青は空の色、水の色、影の色、哀愁の色と茂雄さんらしい広がりを持っています。この絵の青も影を表しながら、爽やかさとわずかのもの悲しさを感じさせる印象的な色になっています。

この低い土手は茂雄さんが一時期好んだ場所らしく、しばしば描かれています。土手の土、その土とは質感の異なる地面の土、土手と地面の境界をなす石、そして木々、向こうに抜ける緑。それらが混ざり合うさまが茂雄さんの眼をとめ、手を動かしたのでしょうか。土手を塗るクレヨンをナイフでこすりつけたり、木の幹や葉の下地に白い水彩絵具を盛り上げて質感を強調したりと、物質感をとらえようとする茂雄さんなりの実験がさまざまに見て取れます。

さらにこの絵に関しては、それらの物質を覆い、より複雑で微妙な表情をもたらしている光と影に茂雄さんの絵心が動かされているようです。右下から大きく円を描くようにして右上へとうねっていく全体の構図と、その構図に回収されることなく(しかし調和をなすように重なりながら)眼の中でカクカクと自在に動き出すそれぞれの色彩。茂雄さん自身が強調する「写実」を越えて、どこかセザンヌにも通じるような快活さをこの絵は放っています。(たけ)