少し異色と言えるかもしれません。
それは、荒尾市に転居した昭和48(1973)年から手がけている
“私の筑後路” と題した木版画の一点なのですが、
シリーズ名にあるように、自分を育ててくれた筑後の風景を題材とする
一連の作品の中にあって、これは草花が描かれています。
作品名は「緑照青影」。
描かれる草花は、“私の鎮魂花譜” で繊細に描かれてきた
一輪、一株に、共通するものもあるのでしょうか。
現在まで、170点以上が制作されているこのシリーズの中で、
このように黒白の対比だけで表現された作品は、ほとんどありません。
墨だけを使った作品であっても、その多くは、中間となる灰色の諧調を加えることで
さまざまな調子を作り出しているのです。
さまざまな調子を作り出しているのです。
この作品が制作されたのは、昭和58(1983)年。
この年、江上さんはお母様を亡くし、近しい方々への香典返しとして
この作品を彫ったそうです。
少年時代に父親を亡くした江上さんにとって、
以来、姉、妹と自分を育ててくれ、
絵のこともずっと見守ってくれていた母親は
絶対的な存在だったといいます。
この作品を彫ったそうです。
少年時代に父親を亡くした江上さんにとって、
以来、姉、妹と自分を育ててくれ、
絵のこともずっと見守ってくれていた母親は
絶対的な存在だったといいます。
黒と白によるシルエットで、細やかに彫り、刷られた草花。
それは、家族の思い出のひとつひとつを確かめ、
刻んでいく工程だったのかもしれません。
刻んでいく工程だったのかもしれません。
(とく)